「英単語=その意味」で覚えることの“落とし穴”

例えば、「eat=食べる」と記憶する。中学で覚えるには十分かもしれない。
「食べる」という日本語を少し範囲の広い言葉に敷衍すると、ほとんどの英文を理解することができる。だから「食べる」で十分だ、という学習である。

これではeatを使った会話はできない。eatをそのまま(明瞭に)発音すると、命令形になる。
Eat! 食べろ!って、なんてこと言うの?と相手をイラッとさせるでしょう。
「食べる」ことを命令するシチュエーションって、ほとんどないはず。
不機嫌な親が子供に「食べろ」と怒鳴ることがないとは言えないが、珍しいことであろう。
eatと発音した時、その声のトーンによっては(自信をもって、はっきり発音すれば)意図せずに命令になってしまう。

昔、かの有名な松本亨先生がハワイに行って、税関の順番を待っている時、前の日本人がアメリカの係官に険悪な言葉で怒鳴られているのに遭遇したエピソードを本に書いている。
税関の係官は手荷物の中に羊羹を見つけ、「それは何か」と尋ねたらしい。
昔の事なので、その係官は日本の羊羹を知らなかったようである。
それで、くだんの日本人は“Eat”と言ったらしい。
税関の人は、「食べろ!」と言われて、カチンときたらしく、I don’t want to eat it!と声を荒げた。
係官はまた何かを言ったようだが、その日本人はまた、“Eat”と言った。
係官はNo! I don’t want to eat it!! と更に声を荒げた。
そこで松本先生は、何か誤解がありそうなのでhelpしましょうと申し出たとのこと。
ところが係官は、「いや、自分ところの通訳を読んでくるので、助けはいらない」と断った、という。
その日本人は税関の別室に連れていかれて、随分不愉快な経験をすることになっただろうと思う。楽しいはずのハワイ旅行をそんな“事件”で、ふいにしたくないものである。

正しい答えはSomething to eatとか、It’s a Japanese sweet…made of red beans and sugarとか、I will eat it myself とか言えば、問題なく税関を通れたと思われる。 eatの名詞形はeating なので、少なくとも最初に「eating」と言えていれば、次なる質問はあっても、係官を怒らせることはなかったのではないか…

その日本人の気持ちは私にもよくわかる。「食べろ」じゃなく「食べる(もの)」という意味だったはずであると。

英語のeatを単独で発語するシチュエーションはほとんどない。
おそらく全くない、と思う。
常に主語が付く(誰が食べるのか)、あるいはeatingのように名詞になるだろう。
「eat=食べる」と覚えても、会話では使い物にならないことをはっきり覚えておかなければならない。
eat, do, drink, take, sing, choose, make…実に多くの単語は、単独に発語すると命令形になる。
現実には外国人相手に命令形を使用する機会は皆無であろう。家族か会社内ならあるだろうけれども…

言わんとするポイントは、「sing=歌う」と記憶して終わり、という勉強の仕方はほぼ間違った勉強の仕方だ、と言いたいのである。
ほぼどんな時でも、主語が必要である。
I sing. You choose. He makes. などなど。まず主語が必要。
しかも現在形の原形のままで使うこともあまりない。
I sing.と言ったとしたら、相手は戸惑って、What do you mean?と聞いてくるであろう。
Oh, I sing every day. I practice singing. I began to sing last year. みたいに話さなければ、会話にならない。
I singの原形の表現だと、相手を(一瞬にしろ)戸惑わせることにしかならない。
まして、singだけだと、「歌え」と取られかねない。「なんでお前は俺に「歌え」なんていうのか?」とケンカになるかもしれない。

「eat=食べる」、「sing=歌う」を良しとする記憶法は大きな問題だ、と言いたい。英語で会話をしないのであればそれでいいが…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です