語順が違う難しさ。考えるプロセスが違う。

中学校で英語を習い始めた頃、I am a boy. This is a pen. という文章が英語の教科書に出てきました。
「私は、です、一人の少年」「これは、です、一本のペン」
機械的に意味を覚えながら不思議な語順だなあと、当時思った記憶があります。
何で「私は、です」と、「です」が「少年」の前に来るのだろう。
普通「私は」なんて言わないし、あえて言うとしたら「僕、少年(大人じゃない)」や、「これ、ぺん(鉛筆じゃないよ)」と言うだろうと。「です」を言うとしても、一番後だよなと。
慣れてくると、簡単な構文の場合、あまり違和感がなくなりました。でもちょっと複雑な文章だと一苦労でした。今でも、ときどき苦労しますね。

こんな日本語の文章はどうだろう。
「しばらく続いていた上向きの景気は、この数日で消え去ったかのようだ。再び底なしの不景気に落ち込むと不安がる企業経営者は少なくないらしい。」
英語で発想するとすれば、「景気 (the economy) 」が主語。「しばらく続いた上向きの」はそれを修飾する表現。
日本語で考えると、「しばらく続いた」という言葉が「景気」の先にまず頭に浮かぶ。「景気」が出てきて、次に「しばらく続いた」とは考えない。
次に英語では「企業経営者」が主語。それにしても、その前の表現が長い。「再び底なしの不景気に落ち込むと不安がる」が、英語では「企業経営者」の後に続くのが普通。
アメリカ人なら、「corporate management」のように、まず主語が頭に浮かぶ。
次に「recession might come again」とか「recession might hit the country」とか「the economy might plummet again」などという言葉が浮ぶだろう。
さて、その後をどうつなげるのか。
「corporate management」と頭によぎった瞬間に「many」が浮んで「many corporate management」と語順を変えてしまうかもしれない。
「many corporate management」が「不景気に落ち込むと不安がる」と考えるのではないかと思います。
上のようなごく日常的な文章でも、日本語と英語では語順が随分と違う。
長年、英語に慣れてきても、私には「しばらく続いていた…」がつい最初に頭に浮かんでしまうことがあります。
そんな時は、頭の中で一時ストップして英語で考え、それらしい文章に組み立てる。
私の経験からもこの語順の問題は大きいと言えます。

「何も見えない闇で、波の音がよく聞こえてくる感じがした」なんていう文章が頭によぎった時、さて、英語ではどう話し始めるのだろうか。
It was really dark. I only heard the sound of waves.
まあこんな感じだろうか。
この日本語の文章では主語は明示されていません。でも、英語ではまず「it」と「I」という主語を明確にします。
また、「闇」というのは単に「dark」でよいのか。「何も見えない」をどう表すのか。「闇」なら、何も見えないのは当然だから、単に「dark」でいいか。
次に「聞こえてくる」は、どうするのだろう。「聞こえてくる」って、波の音が距離をたどってこちらに届いたという雰囲気を、どう英語にするのか?
 結局、この日本語と英語の文章の語順はかなり違うことになると思います。
それと一字一句的には、ニュアンスも少し違います。 

日本語と英語の語順。
言語(文化?)の違いが語順を変えてしまう。そして、意味する範囲も少し(かなり?)違ったものになる。
本当に英語に堪能になるとは、それを飛び越えることなのだろう。その跳躍や脱落、またニューアンスの変容を意識しなくなった時が、本当に英語に堪能になった時なのだろう、と私は思います。

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